伝言ゲーム

チャイムが鳴らないと言ってきたから見てくれ、という依頼で
某高校に行ったのが先週土曜日。
機器は異常なく動作しており、手動で鳴らしながら、各教室を聴いて回った結果、
鳴らない所は無かった。
様子を見てもらいましょうと言うことで引き上げた。


翌週月曜の午後、今朝鳴らなかった、と言われたから見に来たが、やり方を教えてくれ、と元請けから連絡があった。その日の放課後、彼らがチェックに言ったが、私が行ったときと一緒で、間違いなくなっていると言う。
手動とタイマーの接点で鳴らすのと違いがあるの?と聞いてくるが、
そんな動作が組める装置は入っていない。


とにかく火曜日の放課後来てくれ、と言うので、他の件で修理依頼があった市原から柏まで移動した。
異常は無い。修理依頼をしてくる担当者も、今朝は鳴らないのを確認した、と言う。
よくよく確認すると、教頭が、聞こえないと言ってきた教室はどこかの調査結果をもって出てきた。
「チャイムは鳴っているが、聞こえない教室があって、他と同じように聞こえない、鳴らない。」
最初から全文を言ってくれれば良いモノを、
赤字の部分は省略して、最後の部分しか言わないから訳が分からなくなるのだ。


これは現地を調べなければいけない、大元は関係ない、と言っても、手動では鳴るが、タイマーでは別の動作をするのでは?とまだ疑ってくるので、説明をして、
教室のアッテネーターは最大(一斉でアッテネータが効く設定)、
チャイムの音量をめいっぱい上げて、当該教室を聴いて回ると、やっと納得。
其れでも音量が小さい教室があった。
よく見ると、スピーカーパネルにテープが貼ってある。これでは音量が下がっている上に生徒が騒いでいて音がかき消されていてよく聞こえなかったわけである。
剥がすと普通の音量になった。


最近の学校の教室のスピーカーは、非情放送と兼用の設置が殆どで、消防法上の設置基準で設計しており、ほぼ全部が、平面図での設置設計で、こうすると簡単なのである。
ところが学校の教室のように天井が高くない部屋では、スピーカーの真下では五月蝿く、周辺に行くと良く聞こえない状況が生まれる。


学校放送設備が全国に普及していった頃は、全放連型スピーカーという、ボックスに入った前面が傾斜したものを、教室正面の真ん中に設置したのである。廊下もそうだが、スピーカーに相対した状況の方が、明瞭度が上がるのである。
其れが何時しか、壁掛けスピーカーは小さくなり、隅に追いやられ、やがて天井埋め込みになってしまった。


入学試験のヒアリングに彼方此方で支障が出ているという話は良く聞く、
分かっている設計者は、正面に壁掛けを設置、消防法上不足する距離の所には、天井埋め込みを設置する設計にしているところもあるが、費用がかさむため、私が施工した現場では、わずかしか無い。


ごく初期の建設省の設置基準書には、およそ専門家が書いたとは思えない設置方法が載っていたことがある。
体育館のスピーカーを向かい合わせに設置するときは、対面上のスピーカーの一方の極性を逆に繋げ、と言うのである。これなど、机上の理屈だけの設計で実際経験していない人が書いたモノなのだ。いや、理屈で考えてもおかしい。どうなるか、やってみれば分かる。


ハイレゾだ、アナログだ、と騒がしい音の世界であるが、その辺りとはあまり縁が無いが大切な場所の音響設備が、難しい公式で弾き出した割には、実用上へんてこな仕様になっている感がある。