MEMSマイク

MEMSマイクと聞いて、恐らくほとんどの人が、なんじゃ?それ、と思われるに違いない。
名前は知らなくても、たぶんブログを読む人であれば、まず使っていない人はいない。
知らずに使っているだけだと思う。


どこに使われているかと言えば、スマホなどの携帯電話のマイクである。
米粒より小さい、コンピューターのボード上にあるチップ抵抗のようなものと思っていただければほぼ間違いない。スマホで音楽を空気録音しても充分使えるほどに高性能化している。
ただ、あまりに小さいため、これを使った単体の高性能マイクは、製品化されておらず、ほんの一部のアマチュアが作っているだけと認識している。マイク以外にも応用はあるようだ。


松下の100円ほどのコンデンサーマイクユニットで、高性能マイクを作っている方が、このチップを使った高性能小型マイクの制作を発表しているほか、ここからヒントを得てご自分で制作してフィールド録音を楽しんでおられる方もいる。


このマイクを使ってアナログディスク用カートリッジを開発、制作して、製品として世に送り出した方がおられる。
アナログレコードが復活し、カートリッジメーカーも大手も含め新製品が目白押しで、光カートリッジも復活した。従来のメーカーも、新構造の製品を発売したりしているが、いずれも、高価で手が出ない。デンオンの局用MCカートリッジが、1965年頃発売当初は21000円だったが、現在5万円を超えた。
それでも他が皆高価になり、安い部類に入ってしまう。
昔から高価な製品はあったが、50万円、100万円となると、重さあたりの単価は、下手な宝石より高い。このMEMSカートリッジも、55万円である。

これはDL103


あるオーディオ愛好家は、今までいろいろ手にしたオーディオ製品のうち音が良いと思ったのは、ゴトーユニットのスピーカーと、このMEMSカートリッジだと言いきる。


MEMSカートリッジは、針先から繋がるカンチレバーの左右に90度の角度を付けて音道をつなげ、その先にMEMSマイクを付けて、なんと、カンチレバーの振動音をマイクで拾うのである。
そして、音道の形状などから拾う調整された音をRIAAイコライザーを通さずにラインレベルの250mvで出力する。マイクがコンデンサー型なので、電源が必要なのと、不要帯域の調整から、イコライザーと呼ぶ専用電源部は付属している。


開発者が、米粒より小さいマイクチップに、顕微鏡をのぞきながら、ケーブルを付け、製造しているが、もちろん販売会社を通しての発売なので、値段は他の製品に比べれば、そうなるのはわかるが、手が出ない。革製のケースの方がよほど高価に見える。


アナログが復活して以来、真空管メーカーや、ガレージメーカーも含め、市場を賑わせてはいるが、
復活した当時のテクニクスの9万円や35万円のアナログプレーヤーが安く感じるほど各メーカーの値付けは高くて強気である。金持ちしか相手にしていないのかと思うほど。貧乏人の僻みととられても仕方が無いほどである。


まあしかし、わざわざアナログレコードを作るにしても、CDを作るより費用は膨大にかかる。1枚あたりの単価が高いのは時代だから仕様が無いが、CD2枚組の値段が5000円以下、同じ内容の45回転LPが2枚組で10000円弱、と言うのもある。しかも、その音源はと言えば、名盤の録音は古いものしかないので、過去の遺産から持ってくるが、アナログ保存媒体では、使い物にならず、デジタル録音したものを使っていたりする。




出てくる音はさておき、S/N比やダイナミックレンジ、歪み率は、どう転んでも、アナログの方が不利
である。安くて心地の良い音や音楽を安く上げる方しか出来ないが、生に勝ることは無いと思う音や音楽を聴けるようになった今の環境を楽しみたいと思う。

                                                                       



アナログが終焉を迎えた頃、レーザーでレコードの溝の音を拾うプレイヤーやレコード演奏中に盤面をひっぱたいてもビクともしない機械屋が開発した寺田式ターンテーブルなどが発表されたが、時期が遅かったのか早かったのか、今の時代ならもっと商売になっていたと思う。最もエルプ社の非接触レーザーターンテーブルは当時から針のいらないレコードプレイヤーとしてずっと健在である。


いずれにしても、自分でいじれる要素が充分にあるアナログ機器は、ブラックボックスで簡単にある程度いい音が聴くことの出来るディジタル機器より趣味向きであるのは事実である。お金との暇のある方は世のため、業界のために大いに投資していただきたいと思う。